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熊谷より愛を込めて。
5月3日。世間はゴールデンウィークである。しかし、バイトで日々を無垢に過ごす俺には、祭日など人が混雑するだけの何ものでもない。 しかし家を出て駅周辺の人込みを、ベンチに座ってぼんやり見ていると、俺も心の垢を流すために旅に出たくなった。 たまたま夜は久々に、プチ引き蘢りのSと呑む約束をしていたので、どうせ暇だろうと思ってSに今から旅に出る旨を告げた。Sも暇を持て余してた(つーか常に暇)ので、一緒に行くことになった。 しかし、どこに行こう? Sと二人で上野駅で集まったものの、そこで考えた。 はっきり言って二人とも殺人的に金がない。 宿泊は無理である。 路線図を見ながら検討すると、Sが、 「籠原とか、どう?」 と呟いた。 「籠原?どこそれ?」 良く分からないが、まあ、一生のうち二度と行かないような場所に行くというのも、今の俺たちにとってはアリかもしれない。 男らしく、即断した俺たちは、 「まあ、無駄に行ってみようか」 と、かなりのハイテンション(?)で改札を抜け、宇都宮線に乗り込んだ。 生涯初の宇都宮線である。しかし、そんな初体験もやはりテンションは上がりようがなく、二人は無言のまま1時間ばかり列車に揺られた。 「なんか、眠いね」 などという大きな盛り上がりをみせた会話が、このときの俺たちの気持ちを表している。 しかし、この後降りた籠原駅は、人をバカにしているかのごとく何もない。 「何ここ?つげ義春みたいな町だね」 そんなわけで、わずか10分の滞在で、すぐさま籠原を後にすることになったのだが、あまりにここまで来た意味がない。 熊谷は、隣の籠原とはさすがに違って、田舎街の中心街の風情を漂わせてくれていた。 こうして日々は過ぎ、人生は終わるのである。 しかし、まあ人生が終わる前に、酔っぱらった二人の前に立ちはだかった客引きが、俺たちをキャバクラになど導いてくれたのである。 1時間3000円。 しかしである。。 安かろう。悪かろう。 あまり、言いたくはないが、どのコもあまりに接客する気のない、その素振りに、東京のキャバクラに慣れてしまった俺たちの心は、逆にひどく空しくなったのである。 また一段としょうがない1日に心を痛めたため、その後、静かに居酒屋で呑み直した俺たちは、うかつにも帰りの電車賃を使い込んでしまい、人生で初めてのキャッシングを覚えることとなる。 「へえ、お金って、こんな簡単に出てくるのか〜」 この行為が俺の今後の人生を大きく変えることとなるとは、このときの俺には知る由もなかったのである。 おしまい。
投資額 約3,000円(交通費は含まない)
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