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飛行機が空中でニアミスしたというようなことがあれば、国を巻き込んで大騒ぎになるものだが、今回は俺の身に起こったニアミスの話をしたいと思う。どうか、この話を聞いてもパニックにならないでいただきたい。
このサイトで散々語っているが、俺はキャバクラで年間200万超もの金を散財しながら、ただの一度たりとも良い思いをしたことがないという山田洋二節の哀しきキャバラーである。
しかしながら、そんな俺にも過去を紐解けば、チャンスらしきものがなかったわけではない。
昨年の、ある夜のことだ。
俺は、その夜また一人よがりに枕を(精子で)濡らしながら、深酒して布団に入ったのだが、完全に眠りに落ちようかというとき、唐突に携帯が鳴り現実の世界に引き戻された。
誰だ、今ごろ?
時計を見ると、夜中の2時。
はっきり言って、俺は、自分から誰かに携帯で電話することはあっても、誰かから電話がかかってくることなど滅多にない。下手すりゃ1ヶ月前の着信履歴が残っているくらいだ。そのくらい人望が厚いと自分では思っているが、意味が繋がらないので、実は人望が薄いの間違いかもしれない。しかし、そんなことは気持ちの持ちようである。それよりも、俺のもとにこんな時間に電話がかかってくると言えば、ワンギリか身内の不幸の知らせくらいではないか。
電話が1コールでは切れなかったので、俺は、思わず緊張して、電話を取った。
ところが出ると、それは、Jという店のSからの電話だった。
Sは、何度か指名したことがあり、外で会ったりしたこともあるコだった。
どうした、こんな時間に?
訊くと、Sは、
友達とカラオケ行ってたら帰れなくなっちゃった
と言う。
だからどうした、と思ったが、その後Sは驚くべき言葉を発した。
独眼鉄さんの家って、U駅の近くでしょ。私、ここから自宅までタクシーで帰ると1万越えちゃうから、今晩泊めてもらって良い?
!!!
な・な・な・な・何ですと??
俺は今まで「不幸は唐突に、幸福は積み重ねで」というのが持論だったが、こんな「飛んで火にいる夏の虫」的チャンスがめぐってくることがあるのかと、一気に酔いがぶっ飛んだ。
断る理由などあろうはずもない俺は、ふたつ返事でオーケーを出し、それから夜中の2時過ぎであるのも忘れて、部屋を掃除し、コンビニにゴムを買いに行った。
ああ。生きてて良かった。
今までの人生、ダラダラと誰の役にも立たずに生きてきたけど、それでも幸福は平等にやってくるんだなあ。
と、イヤな悟りの境地にいたりながら、チェッカーズの「神様ヘルプ!」(のサビの部分だけ)を口ずさんだ。
準備は万端。
待ってるときの緊張感はデリヘル嬢を呼んだときに似ているな、と思ったり思わなかったりしているとSから、近くへ着いたという電話が鳴る。
ウーララララララー!
俺は、キン肉マンのジェロニモよろしく奇声を上げながら(でも夜中なので小さな声で)Sを迎えに行くと、Sは完全に酔っ払っていた。
ひさしぶりブリ〜!!
Sは、真夜中に似つかないほど高いテンションで寒い挨拶をしたきた。
なんか、イメージしてたのと違うな、とは思いつつも部屋に招き入れる。
部屋に入れると、Sは、
やっだ〜、なんか広〜い。なかなか凄いじゃ〜ん!
と、半分お世辞で半分感嘆の声を挙げた。
昔は、結構稼いでいたからさ。
俺はありったけの適当なウソでSの気を引き、ソファに座らせて、ウイスキーの水割りをそっと差し出した。
完璧。
完璧すぎる対応である。
俺は思わず自分に酔った。
そして、部屋の隅に隠したコンドーム(匂い付き)に目配せした。
「もうすぐ、出番だぞ」と。
しかし、この後、Sのカラオケ帰りの異常に高いテンションが大きな誤算となる。
夜中の2時過ぎだというのに、機関銃のようにSは語り出した。
もちろん、俺に話など振ってこない。すべて自分の話だ。仕事の愚痴、家族の話、自分の夢エトセトラ。幾ら相槌を高速で打っても止まる気配がない。まさに「恋のマシンガン」byフリッパーズギターである。
それが、3時を過ぎ、4時近くなっても止まらない。
Sは今日は仕事が休みだと言ったが、考えてみれば、このコは普段ならまだ仕事の真っ最中なのだ。
俺は思わず焦った。
こっちは、明日7時起きで仕事である。
もともとの生活のリズムが違いすぎる。
気合だ。気合を入れろ。
俺は自分を奮い立たせたが、体力的に限界が来ていた。
そこで、俺は、最後の勝負に出た。
はっきり言って、口説きに入るテンションではない。
しかし、Sのテンションが下がるのを待っていたら、朝になってしまう。
そこで、俺はSの話しを遮って、ボソッとただ一言、言葉を発した。
なあ、もう寝ようぜ。
と。
この「寝る」という言葉の意味をSがどう受け取るかに全てを委ねたのだ。
Sが「寝る」を「互いに性器を出し入れする」ということだと了解すれば、万事オーケー。快楽の世界にレッツラゴーである。逆に「ネルソンマンデラ大統領」とか「カーネルサンダース」の略だと誤解すれば、今日は打ち止めの合図である。
俺は緊張してSの答えを待った。
ところが、Sは、俺の言葉には反応せず、
ねえねえ、コンビニって、このマンションの下にあったよね?
などと訳の分からないことを訊いてきた。
俺は、質問の意味が分からないでキョトンとすると、Sは、
実は、今日、女の子の日だから、ちょっと買い物してくるね
などと言い払って、部屋を出て行ったのだ。
×××
俺は、眠気と思わぬSの発言に反応が遅れた。
我に返ったのは数秒後だ。
なんだと、コラ!!ナプキンで絞め殺すぞ、オラ!!!!
俺は思わず怒鳴りたくなったが、すでにSは出て行った後だったので、口にするだけ体力の無駄である。
俺の盛り上がりを返せ〜!
そう、心の中で叫びながら、悔しさの余り、Sがコンビニから戻ってくる前に布団を引いて先に寝てやった。
そして、コンビニから帰ってきたSがドア越しになにやら話し掛けてきたが、無視してやるとホントに眠ってしまった。
朝起きるとSはすでにいなかったが、それが、俺の唯一のレジスタンスになったかどうかは皆さんの判断にまかせたいと思う。。
ただ、一言だけ言わせて欲しい。
生理の日にわざわざ男の家に泊まりに来んなよ!
ちなみに、Sとはそれっきりである。
そして、こういったニアミスは何故か俺の身にしばしば降り掛かるので、他の話はそのうち披露することとする。
本日の結果
投資額 1,050円(コンドーム代。後にオナニーするのに使った)
回収額 -10,000円(翌朝眠くて会社で寝てたら、上司に怒られた。悔しい)
収支 −11,050円
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