その女、ベテランにつき


俺の地元であるF県某市には、無数の飲み屋があるが、その中でも20年の実績を誇りダントツの知名度を持つ高級店がSという店である。
Sはいわゆる1セットで幾らという店ではなく、座って幾ら、ボトルを入れて幾らという「クラブ」である。ただ女の子を一定の間隔で付け回すという点では、「キャバクラ」の要素も取り入れている。
仕事の接待として使われることも多いらしく、客の年齢層は高い。
俺が数人の連れと入店した時、揃ってTシャツにジーンズというヤル気のない格好だったが、そんな客は我々だけだった。
20代の客は珍しいようで、店長らしき黒服の男は、我々の支払い能力に疑問を抱いたのか、こと細かく料金の仕組みを解説してくれた。

そんなの、何とかなるから、可愛いコ付けてよ。

友人のMが店長に声を掛ける。
さすがは我が友人。財布の紐が自分の財力を無視してゆるい。しかも下品である。
とは言え、しょせん田舎なのでボトルを何本も開けるような馬鹿な飲み方をしなければ閉店(とても早く、12時半で終了)まで居てもせいぜい一人2万ちょっとだ。時間計算すれば東京の中堅キャバクラ程度である。
果たして、料金と格に見合った女の子が在籍していたかどうかは分からないが、少々この店のキャストには気になることがあった。
それは、普通のキャバクラじゃ考えられないほどキャストの年齢層にバラつきがあることだ。
正直、ルックスについてはとやかく言わない。人には個性があるものだし、田村亮子にだって惚れる男はいる。大体、ルックスについてとやかく言うと、自己否定になるので、自分のためにも余計なことを言わないことにしている。
ただ、年齢に関して言えば、一言物申したくもなる。
最初に座ったコは18歳だった。アルコールも飲んじゃいけない歳である(飲んでたけど)
その次に座ったコは25歳。かなりベテランの香りがした。25歳という年齢もたぶん当てにならない。しかし、このコはまだ良い。俺的にはむしろ話が合ったし。
問題は次に座ったコだ。
いや、コという呼び方も少々気が引ける。
そのくらい腹が据わっていた
すでに銀座のママの領域に入っていたのだ。しかも「店持って何年目ですか?」と尋ねたくなるくらいに。
俺は失礼ながら、座るなり思わず年齢を聞いてしまった。
すると、「あなたは何歳?」と穏やかに子供をあしらうように聞き返されたので、素直に自分の歳を告げると、「そう、じゃあ、私はあなたの12コ上ね」とまるで迷子の子供をあやすデパートの親切なおばさんのようなテンションで(ダメな例え)答えてくれた。

12コ上。

これがどういう意味か分かるだろうか。
一概に、これを年上とだけで判断できない。
なぜなら、私が5歳であったならこのキャストは働くには違法で補導されるくらい若い。
逆に、私が80歳なら、このキャストはもうすぐ黄泉の国に旅立つ歳である。
そのくらい、この「12コ上」という回答には振り子の幅が大きい。
しかし、このときの俺が告げた歳が、26歳だったことを考えると、このキャストの年齢は、26+12歳ということになる。
算数が苦手なので、この計算式の答えはすぐには回答できないが、推測するには、18歳の倍は超えていることが分かった。それが、一店の店に同じ立場のキャストとして働いているのだ。
これは、東京のキャバクラしか知らない人間にとって中々カルチャーショックなことであった。
ちなみに、何を会話したかは覚えていない。
だからどうしたと言われても困るのだが、ただ、心の中で「お母さん」と叫びそうになったことだけは、酔った頭で微かに記憶に残っていることを書き記しておきたいと思う。


本日の結果

投資額  21,000円
回収額 
     10円(とても口説く気にはなれず)
収支  −20,990円

 

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