ザ・風船割り大会

 

先日、とある友人(ダメ人間)と夜も12時を過ぎる頃まで家で飲んだくれていると、「女と話がしてえー」というテンションになり、数ヶ月ぶりに地元のキャバクラへと足を向けることとなった。
以前何度か通っていた「J」というお店に行くと、その日、「J」では「風船割り大会」というイベントを催していた。
「風船割り大会」とは1回500円を払って、店の天井一面に張り巡らされた風船のうち一つを針のついた棒で割り、中から出てきた番号と同じ番号の賞品がもらえるという、言うならば単なるくじ引きである。
1等は、DVDプレイヤー、2等がマウンテンバイク、3等が妙な人形、あと駄菓子とかドリンク無料券とか1,2等はともかく後は露天のくじ引きも真っ青のぼったくりなイベントである。

全く、こんなくだらないことに金を使う奴は、大馬鹿だよなあ。

と座ってるだけで1時間7000円かかるシートに腰掛けながら思ったりしたが、隣の女の子に煽てられたので、「モノは試し」と俺も及ばずながら参加することにした。

しかし、俺が金を払って順番を待っている折、タイミング悪く隣にいた50代のサラリーマンのオヤジが1等を引き当てた。

ちっ、運の良い奴。

と舌打ちすると、実はこのオヤジ、60回もくじを引いていることを隣の女の子から耳打ちされる。

60回というと金額にして30,000円である。
馬鹿である。

今どきのDVDプレイヤーなんて、買ったってもっと安く買えるじゃねえか。
などと思ったので、侮蔑を込めて、

いやあ、おじさん、おめでとうございます。60回もやるなんて凄いですねえ。

と話し掛けると、そのオヤジは誇らしげな笑顔を俺に向けた。

あーあ、馬鹿だからこっちが馬鹿にしてんの分からないんだな。

と哀れんでいると、まだ客の注目が覚めやらぬ中、そのオヤジはオキニであると推測される隣のコに、その当たったばかりのDVDプレイヤーを手渡しでプレゼントしてみせた。
そして、喜ぶ女の子を見て、先ほど以上のそれはそれは満面の誇らしげな顔を見せたのだ。

な、なんて明け透けなんだ。
そのコの笑顔は、オヤジではなく、ただただDVDに注がれているというのに。。

と、哀れみを通り越して飽きれて眺めていたが、その興奮が冷めやらぬうちに、なんと続いて変なデブのサラリーマンが2等のマウンテンバイクを引き当ててしまった。
大騒ぎして、店のコと喜びを分かち合う変なデブ。
そして、クレージーなことにその変なデブもすぐさま女の子にそのバイクをプレゼントしてみせたのだ。

おいおい、くじで当たったものは全部プレゼントしなきゃいけないなんて法律ねえぞ。

と思ったが、まあバカな上デブじゃあ自転車にも乗れやしねえな、と納得することにした。

しかし、俺的には事件はこの後起こる。

1等も2等もないマヌケなくじを引いた俺はモーニング娘のボールキャップを引き当てたことで一気に気色ばんだ。
ボールキャップとは、ペプシのイチロー人形が有名であるが、高さ5センチほどのキャラを型どったものだ。
買ったら300円のものなので「引き当てた」という表現は、正確ではないかもしれないが、この人形の矢口の微笑みに魅せられた俺は、このキャップを全種類集めることを決意することとなる。
もちろん、賢い俺は、くじ引きを何回も引くようなバカなことはしない。
どうせ、バカな他の客が女の子にプレゼントしていることは察しがつくので、俺は、隣につくコすべてからおねだりするというとても優れた作戦に出た。
これは、ホステスは客からモノをもらう立場である単純に信じ込んでいる女たちに、良い年したオヤジでもモー娘グッズを集めるというリアルな非日常を体感させるのと同時に、その先入観に喝を入れるトリプルで有意義な作戦である。
そして、最初のコから、この作戦は功を奏することになる。
あきらかにイヤがるその子の尻を叩き(比喩です。ホントにやったら追い出されます)俺は2つのモー娘キャップを獲得することに成功した。
しかも、その二つとは加護と紺野である。俺的二大キャンペーン開催中とも言える二人をゲットした俺は、「私も5つ持ってるよー」と自慢してきた別の女の子にも、酔いにまかせて「俺によこせ」と口にした。
しかし、10代と思われる可愛い顔をしたその子は、表情をキツくして「いやっ」などと拒否してきた。

小生意気な娘がっ!

俺は憤慨して、その理由を問い正すと、

だって、私、モー娘のファンなんだもん

などとつまらないことを言い放った。
くだらない。ファンなんて言葉は口でなら誰にだって言えるのだ。お前がモー娘のファンなら俺だって(聞いたこともない)B'zとTMレボリューションのファンだよ
と言いくるめるより先に、

どうせ、エセファンだろ!俺なんてなあ、モー娘のホームページ持ってんだぞ。ヤフーで検索したら一番上(02.11月まで。現在はサイトを改訂)に出るんだぞ。

と自慢してやると、そのコは本気で語気を荒くして、次のようなコトバを口にした。

私なんて、ハロプロのファンクラブに入っているし、コンサートは1回もかかさず行ってるし、CDもDVDも全部持ってるんだから!


×××

マジですか?
っていうか、本気で凄いファンじゃん。。

俺は思わず黙り込んだ。
そして、

あ、あのさ、モー娘のどこがいいの?

と声を小さくして聞くと、そのコは一転して笑顔に戻って、

だって、可愛いんだもん♪

と、赤ん坊のようにキラキラした目で俺を見た。

モー娘を見る目に、決定的なナニかが違うことを目の当たりにした俺は、打ちのめされた気分になり、泥酔して正体不明になっている友人を置いて帰宅の途につくことにしたのである。

切ない。
何かが切ない春の夜だった。


本日の結果

投資額  20,500円
回収額     900円(ボールキャップ3つ)
収支  −19,596円

 

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