キャバ一期クラ一会

 

例によって、会社からの帰宅途中にわざわざ繁華街をうろつくという行いをしたため客引きに捕まる。

新規オープン!今だけ1時間4000円!!

暇だったせいもあり、そんな中年の客引きの声についつい乗ることにした。
しかし、客引きが案内するビルにどうも見覚えがある。なおかつ、客引きの持つチラシに書かれた店名にも聞き覚えがあった。エレベーターに乗り込むまで思い出せなかったのだが、それは半年ほど前に何度か通った中国人パブだった。ドアの閉まったエレベーターの中で客引きにクレームを入れる。

「この店来たことあるんだけど、新規オープンってウソだろ」
「ウソなんかついてませんよ。本当に最近オープンしたんです」
「俺、今日は日本の子と飲みたいの。ここは中国人の店だろ」

「ウチの店は日本人しかいませんよ」

客引きはそう必死で自分の言葉を肯定しようとする。
エレベーターが止まった。釈然としないところはあったが、別にぼったくりというわけでもないし、以前通ってたときも悪い想い出があったわけでもないので、ここまできたらと入店することにした。
見覚えある店内があった。内装も以前と特に変わっていない。しかし、店の雰囲気が違う。
そう。人が違うのだ。
女の子にも店員にも知った顔はない。
隣に座った子は確かに日本人だった。
客引きの言ったことは半分ウソだが半分ホントだったらしい。

「実はさあ、ちょっと前に俺、この店来たことがあるんだよね」
「あ、そうなの?いつごろ?」
「最後に来たのは、半年くらい前」
「その頃って中国人のお店のときじゃない?」
「そうそう。さっきさあ、客引きに新規オープンって言われたんだけど、店の名前も変わってないじゃん」
「うん、オーナーが一緒なんだよ。なんかオーナーの方針で中国人より日本人のほうが儲かるって、それで店の方針変えたみたい。でも、オーナー中国人なんだけどね」
「ふーん。じゃあ、前いた子達なんて知らないよね」
「あ、私、何人か知ってるよ」
「え、なんで?」
「この店、先月に入ったんだけど、その頃まだ中国の子たちも残ってたんだ」
「ホントに?それムチャクチャじゃない?」
「最近まで一緒に頑張ってた子もいたけど、やっぱり日本の子たちと合わなくて、結局みんないなくなっちゃった」
「そっか・・・。じゃあYって子知らない?」

「あ、その子知ってる。ちっちゃくて可愛かった子でしょ」

「そう!何度か来たんだけど必ずその子がついてくれたんだよ(当時のこの店はキャバクラじゃないので指名制度がなかった)」
「ふーん、なんかこの近くのお店に移って働いてる子も多いらしいよ」
「はあ・・・」

そんな感じで、しばらく回顧話が続いた。

一期一会。

キャバクラごときで、こんな表現をするのは大袈裟かもしれない。二度と会わないキャバクラ嬢など大勢いる。たぶん客引きに引っぱられなかったら、この店にも行かなかったことと思う。ただ偶然とはいえ、昔馴染みの店に、リセットを押したように独りも知った顔がいないというのは、何か考えさせられるところがあった。
追い立てられるようにして店を離れた女の子。その子たちともう会おうと思っても会うことは出来ない。そんなキャバクラの一抹の寂しさをこの日は痛感した。

 

本日の結果

投資額   6,000円
回収額   1,000円(感傷代)
収支   −5,000円

 

 


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