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※今回、敬語です。
その日の俺は違いました。
何かしてやる
そんなカンジで、はっきりとギラついてました。
まず、最近知り合った女の子と赤坂のシャレたお店で飲みます。
その子とどうにかなっちゃう
という方向に進むなら完璧ですが、それがダメなときの保険に、ここ1ヶ月同伴・指名を繰り返して、気の合いぶりをみせつけてたキャバ嬢にも「11時ごろ行くから」と一報を入れときました。完全にアフター狙いの時間帯です。
アフターでどうにかなっちゃう
というのが次の戦略です。二重の網を張ったことになります。
これはさすがに興奮します。
あまりに興奮し過ぎて仕事の間も落ち着かず、思わず致命的なチョンボを犯してしまいました。
でも、大丈夫です。
何が大丈夫なのか分かりませんが、大丈夫なことにしときました。
しかし、あんまりギラギラし過ぎているとやはり女の子は警戒するものです。
なので、このギラつきを削り落とすために、仕事が終わると同時に新橋のビデオボックスに駆け込みました。
ここで心を清めて、本命にアタックするという見事な作戦です。
ある意味、見事過ぎます。
オキニのAV嬢(三本亜美)のビデオをハシゴして心を清めます。
ふー
完璧な作戦。。。
と、思ったのですが、ちょっと誤算がありました。
それは、心が清まり過ぎて、思わず残りのことがどうでも良くなってしまったことです。
なんかこのまま帰って寝てしまいたいぐらいです。
でも、さすがにアポがあるのでそうは行きません。
あーあ、かったりーな
なんてブツブツ言いながら待ち合わせ場所に向かいます。
ちょっと最低です。
でも、逢って飲んでいるうちに、またムクムクとやる気が湧き上がってきました。
不思議ですね。
そんなカンジで、いつもの通り不真面目と真面目を念入りにミックスしたトークで場を盛り上げます。
良いカンジです。
女の子のこちらを見る視線にはかなりの尊敬の眼差しが入っている気がします。
時計の針が10時を回りました。
さりげなく、こっちはまだ飲み足りないなあ、そっちもまだ飲めそうだなあ、なんて言葉を織り交ぜてその店を後にします。
なかなかのさりげなさです。
ここで俺が張った網が生きてきます。
それは、赤坂から帰宅しようとすると、二人は同じ電車で同じ方向に帰らなければいけないということです。
しかも、女の子の家のほうが遥かに遠いので、もう1件飲もうとなった場合、俺の最寄駅で飲むことになる可能性が高いということです。時間的にそこまで行けば、もう帰れない状態にするのは造作もないことです。
するとどうなるのかと言うと、それでもどうにもならない可能性は高いですが、どうにかなっちゃう可能性もあります。
嬉しいですね。
わくわくします。
と、帰り道を二人並んで歩きます。
さっきまでのテンションとは裏腹に妙に二人は静かです。
良い具合の緊張感が走ります。
沈黙を使い分ける男とは俺のことかな、なんて思ったりもしました。
ちょっと心拍数が上がります。
ところが、千代田線のホームに着くなり、その子がおかしな言葉を口にしました。
それは、
○○さんは、我孫子方面ですよね。私は、代々木上原方面に乗ります
というものです。
へ??
最初は何を言っているのか、意味が分かりませんでした。
だって、同じ方向に向かうのに、同じ電車に乗らないわけがありません。
すると、その子は、
私、遠いから座れるところまで逆に乗って戻ります
などと付け加えました。
何?もう帰っちゃうつもりなの?
がっかりです。
でも、遠いんじゃ仕方ないよなあ。
途中までも一緒に帰れないのかあ。
しかし、まあ次回もあるし今回はいいか、なんて思っていると電車が来ました。
帰り道の方面の電車です。
ところが、この電車、全然座る余裕があります。
もちろん、俺は乗ります。
正直言って、ドキドキする瞬間でした。
果たして、彼女の行動は・・・
そうです。期待通りです。
あれ?
見送られちゃってるよ。
うーん、なるほど、なるほど。
そういうことかい。
って、俺と一緒に帰りたくないだけじゃんかよ!!
良く分かりませんが嫌われてたみたいですね。
割とショックです。
ポップに会話してたつもりなのにな。
まあ、単に口説かれたくないだけだろうけどさ。
そんなカンジでこの子とは次回はありませんね。
でも、予定通りキャバクラ行くからいいや。
と、開き直ります。
なかなか前向きな思考回路です。
電車を降りて、馴染みのキャバクラへ入ります。
7時に入ると1時間1000円という破格な値段のこの店も、11時を過ぎると1時間6000円に指名料3000円が乗っかります。
安くはありません。
終了時刻までは3時間。座ってるだけで、ざっと3万の金が飛びます。
今日が勝負と言ったら勝負するしかありません。
さっそくMに指名を入れます。
1週間ぶりにみるMは、それはそれは美しい気がしました。
外で会うと実は全然大したことはないのですが、こういう店で小金払って逢うと魅力的に見えるのはキャバクラにおけるマジックというやつです。
心はすでにアフター一点でありながら、とりあえず適当に会話を流します。
あと、実はすでに酔っ払ってるのはなるべく隠します。
途中、Mがクーラー効きすぎで寒いというので、自分の着ている上着を貸してあげたりします。
うーん、これは優しいというよりイヤらしいですね。
でも、その場のムードに引きづられていた俺は、堂々とそんな恥かしい行動もこなします。
アフター♪
アフター♪
俺の心が連呼します。
しかし、心の盛り上がりとは逆に、身体のほうのテンションは何故か下がっていきます。
時計の針が1時を過ぎました。
どうやら、ビデオボックスでの疲労がボディーブローのようにじわじわと効いてきたようです。
これは誤算でした。
あと、考えてみたら前の子と合わせてもう6時間近く飲んでいるわけで、取り立てて酒に強いわけではない俺は、なんだか胃が痛くなってきたのを感じました。
しかも、明日も仕事です。
あまりに後先考えない行動のような気も否めません。
でも、アフターです。
今日はなんとしてもアフターがしたかったのです。
負けるもんか。
誰かに言い聞かせられるほどの言葉ではありませんが、自分を奮い立たせます。
しかしながら、残り時間がいよいよ秒読みに入ったとき、会話を取り繕うために発したMへの発言が全てを壊すことになりました。
本名、教えてくれない?
そのときの自分としては、この親しげな二人の雰囲気の中では、当然に全く何の疑問のない軽い質問だと思ったのです。
ただ、Mの反応は違いました。
しっかりした口調でMは俺に言いました。
ごめんなさい。お客さんには教えられないよ。
×××
一瞬にして酔いがどこかに飛んでいきました。
そうです。
俺は客なのです。
我に返りました。
俺は単なる客なのです。
肝心なことを都合よく忘れてました。
同伴もこの仲のよさも全ては単なる営業です。
一体何をしているのでしょう。
アフターの文字はもうありません。
俺はボーイの呼びかけを待たずに会計を済まし外に出ました。
時は、お店の終了まであと20分。
とぼとぼと歩きながら、俺は静かにMの携帯番号のメモリーを削除すると同時に、
っていうか名前ぐらい教えたからって何かあんのか
と呟いてやりました。
ザマミロです。
グッバイ、アフター
などと横文字で表現してもちっとも格好良くないのは百も承知です。
人生は何事も経験と言います。
苦い経験もいつかは笑える想い出になるときが来るのでしょう。
とはいえ俺の場合こんな想い出だけで、引き出しいっぱいお腹もいっぱいいっぱいおっぱいなので、もういい加減にしてやってよ、という気持ちもないではありません。
ちなみに、家を出るときサイフに5枚ほど入れておいた万札が、帰るときには1枚もなくなっていたという事実が、今月の俺の生活に大きな支障をきたす事になったことは言うまでもありません。
本日の結果
投資額 42,000円(2人計)
回収額 22円(無駄に見つめ合い、話し合う)
収支 −41,978円
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