バンコク体験記
8 コープクンカップ!バンコク その一(三日目)
バンコク旅行もいよいよ3日目である。
この日は、さすがに観光名所のひとつでも回ってみようということで、シリラート病院のなかにある死体博物館というところに行ってみた。普通の観光ブックには載ってないが、バックパッカーや悪趣味マニアには良く知られたバンコクのミュージアムである。
博物館の中には、ところ狭しとホルマリン漬けにされたシャム双生児の死体やミイラ化させられた犯罪者の屍骸が並ぶ。まあ、死体に関しては今さら驚くこともないのだが、一般の病院の一室にこのようなミュージアムが平然と存在していることと、家族連れで来ている現地人がいたのがびっくりした。普通に小学生程度の子供の姉妹が、ホルマリン漬けの死体を指差しながら談笑しているのだ。
後で本屋を回って調べてみたところ、こっちでいう読売とか朝日新聞に値する大手新聞の一面に普通に死体の事故写真が掲載されている。お国柄というか、国民性なのだろうが、死体に対して日本では考えられないほど寛容な国であることは間違いないらしい。
そんな死体を見まくったからか、急に肉料理が食べたくなって、昼飯はチキンのいっぱい入ったヌードルにした。やっぱり腹が減ったら肉に限る。
それから、夜まではまだ時間があるので、買い物の時間に。行き先はCD屋だ。外国に行くと、現地の音楽を買い漁るのは必須の行動にしている。
タイムズスクウェアのあたりに、小さいながらもこだわりのありそうなショップを見つけたので、そこにいたバンドマンぽい店員のニイちゃんに話し掛けた。(なお、ここでの会話はネイティブかと勘違いされるほど流暢な英語だったが、便宜上翻訳してある)
ヘイ!ボーイ!俺はクールでパンクなイかしたロックを探しているんだ!ボーイのオススメなパンクロックを教えてくれ!
(困った顔を浮かべて)アイドンノウ
ウップス!!オーケー!じゃあ、例えばだ、俺はラモーンズが3度のメシより好きなんだ(でもちゃんと3度食べるけど)最近ならブリンク182なんてのは最高だな!そんなクールなタイのパンクバンドは知らないかい?
(引き続き、困った顔を浮かべて)アイドンノウ
オー!ノー!それは残念だ!じゃあ、キミが最近聴いた痺れるようなクールなオススメなバンドを教えてくれよ!
(さらに、困った顔を浮かべて)アイドンノウ
ここでようやく俺の英語が流暢過ぎて相手に理解されないことに気が付いた。やはり今年のTOEICでまさかの300点代をたたき出したのは伊達じゃなかったらしい。
そこで、今度は、
Do
you know the most famous Rock band in thailand?(タイで最も有名なロックバンドを知ってますか)
と、必至で英文化して尋ねると、ようやく店員は理解してくれて、陳列された棚の中から1枚のCDを差し出した。
バンド名は、BIG ASSといった。
タイで最も売れているロックバンドだという。ジャケットの雰囲気からVOWWOWとかボンジョビあたりの雰囲気を感じたが、とりあえず相手の言い値で購入。(確か1000円程度だったと思う)
ついでに、同じ棚に陳列してあったCDを5枚ほど一列に手に取って購入した。食費を削って、月に何十枚も中古CDをジャケ買いしていた大学時代の記憶を思い出した。
その後、歩き疲れもしたので、一旦ホテルに帰宅しようとしたのだが、その前に軽く1杯呑んでおくことにした。あたりを見回し、すぐ近くにあったハードロックカフェに入店。
カウンターに座って、ハイネケンを注文すると、気さくそうな店員に先ほど買ったばかりのCDを見せて、
このバンドを知ってるかい?
と尋ねてみた。
すると、「このバンドは最高だ!」と親指を立てて誇らし気にアピールしてきた。
さらには、白人客しかいない店内で日本人が自国のCDをカウンターに並べている姿が珍しかったのか、手の空いた店員が4、5人群がって、この曲が良いだの、あの曲が良いだの、聞きもしないのに教えてくれた。
俺はふんふんと頷きながらも、「でも、俺は聴いたことがないから」と言うと、エルビスプレスリーに良く似た(でも生っ粋のタイ人)店員が「まかせとけ」と言って、店の洋楽の有線を消して、BIG
ASSの曲を掛けてくれた。
これが穿った意味でなくて、売れ専の洋楽と比べても普通に聴けるハードロックだったので、いまや世界の文化に差なんて全くないんだなあと感心して、「こいつはクールだ!」と繰り返し褒めてやった。
それから、そのエルビス似の店員と片言の日本語で話していると、
今日はこれからどうするんだい?
と聴かれたので、
友達と飲みに行くけど、キミも一緒に来るかい?
と誘ってみた。するとその陽気なタイ人は、ノリノリで来たがったので、夜の19時に店の前で待ち合わせることにした。
圧倒的インパクトのジャポネ−ゼ・求道者氏とこのエルビス似のタイ人を意味もなく引き合わせる。
また、訳の分からない夜になりそうな予感を残しつつ、以下次回に続く。