バンコク体験記

 5 マイペンライ!バンコク その壱(二日目)

 

二日目である。
結局前夜、求道者氏たちと別れた後も、俺は、この異国の大都会の危険がどれほどのもんかを肌で感じてやろうと、バンコクの深夜を独り彷徨い歩いた。
ほとんどの店は締まり、若者たちは路上で缶ビールを片手にたむろしていたが、俺はわずかにやっているファミレスらしき店を見つけ、そこでさらに深酒をした。ふらふらと泥酔して千鳥足の“金持ち”日本人が、タクシーでプチボッタにあったくらいで無事にホテルに辿り着いたところを見ると、この国は俺にとって安全らしいと結論付けて、眠りについたのは朝方だった。
おかげで、翌朝起きると、日ざしはすでに天井近い。

まずい。

俺は焦った。
朝食のバイキングが11時に締まるのだ。
俺は慌てて食事場所のラウンジに向かった。時計は10時40分頃を差している。すでに客の姿はまばらで、大半が片付けられていた。
適当な席に座ると、迷惑そうにボーイが寄って来て、「まもなくお終いです」というようなことを言ってきた。部屋のメイキングは遅れるくせに、こんな時だけ時間前に片付けるな、と思いながら、撤収作業をしている給仕の間を割って、まだ片付けが済んでなかったフランスパンとハム、それから生温いコーヒーを手に取り、頬張った。
朝飯くらい外で食べればいいじゃん、という気もするだろうが、無駄金はバラまいても貧乏性なので、得られることが分かっているサービスを棒に振るのは癪なのだ。

中途半端ながらも胃袋を潤して部屋に戻ると、今日一日することを考えた。実は、旅行中の計画を何も考えていなかった。(まだ眠いので二度寝することも頭をよぎったが、3泊しかない旅行でそれはあまりに無意義なので気力で却下
これは旅に出るといつものことなのだが、どうにもタイムスケジュールを決めて行動することとメジャーな観光名所を回ることが嫌いで、いつも大まかな目的地だけ決めて、後はその周辺をプラプラして興味が湧くところがあったら立ち寄る、というような旅行をしている。ときに道に迷うくらいのほうが穴場の発見があって面白い。

まあ、ゆっくり街歩きでもするべか。

昨夜は中心街だけだったバンコクの街歩きを広げてみることにして、俺はホテルを出た。
そこで思い出したのが、このサイトの国際マフィア系常連・次元大介氏がススメてくれたふかひれ屋である。
とにかく美味しいらしい。
俺はメモ書きの住所を頼りに、散策がてら最寄りと思しきところまで40分ほどかけて歩き、道行く人々にメモを見せて店の場所を聞いた。
ところが聞けども聞けども、ヒントらしき情報も得られない。
日本のように電柱の地番を辿って探すことも出来ない。
軽く1時間は迷ったあげく、ようやく自分が見当違いのところにいることに気が付く。
サイアム通りというところとシーラム通りというところを読み違えていたのだ。
歩けない距離ではないが、この間2駅分はある。
これでは、田端の駅前で、巣鴨の蕎麦屋を探しまわっているのと似たようなものだ。
通行人の誰もが「知らない」というわけだ。

さすがに歩き疲れていたので、そこからはタクシーで近くまで移動し、その周辺でさらに20分ほど聞き回って、ようやく目的のふかひれ屋を発見。
迷った分、感慨もひとしお、味もひとしおだった。
ただ、一杯800バーツから1200バーツ(2400円から3600円)というのは、日本の感覚でも破格な昼食だったことは付け加えておく。

そんなわけで、目的も達し、お腹も膨らんだ。
次にすることを考えたわけだが、俺は、迷った挙げ句、

ホテルでお昼寝

という結論を取ることにした。なにせ、今晩もまた夜が待っているのだ。

ホテルに帰ると、ここでルームサービス中の清掃員と部屋でばったり遭遇という偶然にも見舞われたが、夕方過ぎまでグーグー。
起きると、すっかり日は傾き、求道者氏と再び待ち合わせた時間が近付いていた。
歩き疲れた体力が全快して、呑むには万全の状態である。

昨日訪れたタニヤ通りに向かうと、今日は求道者氏の同僚と部下のC氏D氏(ともに日本人)が一緒だ。
昨日逢ったのが会社の接待相手のA氏B氏。今日がC氏D氏だ。
別に甲乙丙丁でも、うんこ氏ちんこ氏まんこ氏クンニ氏でも構わないが、便宜上、ローマ字にしておく。
どうせ、すでに俺の記憶では、色んな人が一緒にいたという以外にキャラ分けが出来ていないのだ。

さて、何か食べますか?

求道者氏が聞いてきたが、俺はふかひれを満腹に食べた後は、ひたすら寝てただけなので、腹が減る由もない。
そこで、

いや、まずは呑みましょう。

と他の二人の意見を軽く無視して、いきなり2日目の夜を幕開けさせたのだった。。

 


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