バンコク体験記
4 サワディー!バンコク その参(出発初日)
チクショー!!なんて楽しい国なんだ!!
店を出るなり、バンコクの中心で叫んだ第一声がこれである。
俺は、この楽しさを共感してもらいたくて、初めて逢ったというのに、
めっちゃめらめら楽しいっすよね?ね?
と求道者氏の仕事相手に強引に同意を求めた。
ところが、他の二人は数度目の滞在とあって冷めた様子で愛想笑いしただけだったので、今度は、
コンチクショー!楽しいぞ、このヤロウ!!
と、空に向かって声を張り上げた。
見兼ねた求道者氏が、
まだまだこれからですから、落ちついて下さいよ。
となだめて来たので、俺は半勃ちの息子を軽くさすって、
落ち着けってさ。
とヒロシがぴょん吉を諭すように、呟いて気を鎮めた。
続いて求道者氏が案内してくれたのは、さきほど入ったお店と同じグループにあたる店だった。
この店は、なんとニューハーフとホンモノの女の子が混在しているという。
ステージでは目を見張るような可愛いコたちがビキニ姿で踊っている。
このなかにニューハーフも交じっているというが、誰がニューハーフで誰がホンモノの女の子か皆目区別が付かない。というか元々の性別などどうでもいい気になってくる。
バンコクの懐の深さを見せつけられた気分だ。
席に案内されると、キャストの女の子(たぶんホンモノのほう)と女性店員(たぶんホンモノのほう)が群がって来た。
コーラを呑ませて欲しい、とのおねだりである。
先ほどの店とシステムは同じみたいだが、1杯の値段は80バーツ。日本でいったら約240円程度である。もちろん現地の感覚ではこれでも安くない額なのだろうが、日本のキャバクラで一杯1000円から2000円もするドリンクを無駄に奢りまくりの経験豊富な俺は、こんな楽しい気分にさせてもらって奢らないわけがない。
オーケー!オーケー!!プリーズ!!プリーズ!!
と片言過ぎる英語を駆使して、女の子を両脇に侍らかせた。
ガンガンとユーロビートが鳴り響くなか、お互い片言の英語では大したコミュニケーションが取れたわけではなかったが、隣についたコが、日本の「セブンティーン」(あとで本屋で確認したがタイ語版の「セブンティーン」がある)を読み、深田恭子が大好きだと話してくれた。
中国韓国あたりで日本のタレントが人気を博していることは知っていたが、それがタイにまで及んでいたこととに軽く驚きつつ、タイでこういうところで働く女の子は総じて貧しい農家からの出稼ぎであるというような偏見が消えたことで、頭にはびこっていた罪悪感は和らいだ。日本でいう援助交際か、それよりシステマチックな分、もっと軽い感覚なのかもしれない。
その後、彼女がステージに上がるために、席を離れようとしたときに、
(楽しくお話させてもらって)サンキュー
とまたチップを握らせた。
以降、俺は女の子が横に座る度に、好き勝手にコーラの注文とチップを握らせていたわけだが、周りを見渡すと、女の子が付くこともなく一人ステージを眺めて呑んでいる白人の客が大半である。基本的に白人は、よほど気に入ったコ以外に無駄金は使わないようなのだ。
日本人でも、アジア通などと称する旅行者の記事を読むと、いかに値切るかが上級者で賢い遊び方みたいな文をよく見かけるが、それは大きな勘違いだ。
金は無駄に使うものだ。
その証拠に、後ろに座っていた求道者氏をみると、キャストの女の子といわず、店員から、果ては客引きの男性従業員まで仕事を放っぽり出して彼に群がっている。
なにごとかと思うと、求道者氏はポケットから札束を取り出し、差し出された数々の手の平にその札をばらまいてみせた。
さすがの無駄遣いっぷりである。
バンコク滞在歴3年のあいだほぼ毎日呑み続けてこれだから、恐れ入る。彼の勇姿をみるとケチるということがいかに馬鹿馬鹿しいことかが良く分かる。たぶんもうここらあたりでは有名人なのであろう。
この店を出ると、今度はタニヤ通り沿いの店で2軒ほどしっぽり呑むと、時間は24時を過ぎた。
バンコクでは日本と違って25時には一斉にあらゆる店が締まる。
冷めやらぬ興奮を抱えて、初日の会合はお開きとなった。