バンコク体験記

 1 ビフォア・ザ・フラッグ(出発前)

 
11月21日から25日のあいだ、久々の海外に出掛けることにした。
場所は、タイはバンコクである。
なぜ、俺がこの場所を選んだのかと言うと、このサイトの常連でもある求道者氏が一時帰国して日本で呑んだ際に、勢い余って「来月、遊びに行きます」と言い切ってしまった、というのがあるが(翌日にはその勢いのままJTBでチケットを取っていた)、実は俺は、彼と今生のお別れをするつもりだった。

これは本人に聞かれると大変失礼なことなので、とても人目に触れるようなところで書くことは出来ないが、俺は彼の命が余命幾許もないと思っている。
コラムでは、初めての出逢いの話ししかしなかったが、彼の本性はこんなもんじゃない。なんせ1週間ぶっ通しで睡眠もロクにせずに朝5時まで呑み続ける。自分から指名嬢の前では「帰る」と言えずに1セット15000円の店でプンラスさせらせそうになって(しかも同伴入店)、夜中の2時に店から泣きの電話が入る(この時点ですでにプンラス確定)この他にも本人の名誉のために書くのを控えなければならない武勇伝は数知れない。
そんな生活を10年近くも続けていれば人間、どこかに破綻がくる。実際彼は齢30にして、医者にすでに酒を止められている。明らかに内臓のどこかやられている。なのに呑み続けているのだ。
お迎えの日はそう遠くない。
俺は神妙な気持ちでその日を待った。

出発は11月21日(日)の早朝である。
ところが、この前の晩の話しである。
俺はある知人の女の子と呑む約束をしていた。早めに切り上げるつもりだったのだが、やけに意気投合してしまい、夜中の2時まで居酒屋で呑んでしまった。
挙げ句、そのコが某日芸大出身とあって、色んな創作物に興味があるらしく、なんとこの後、俺が過去に創ってた作品(文章以外のモノ)を家で見せて欲しい、と来た。
ロクなものがあるわけではないが、断わる理由は朝8時に成田空港に到着していなければならないことぐらいだ。ないに等しい。
そこで家に招いて、また呑んだり喋ったりしてると、正直あり得ない展開に、あり得ない角度で激しく勃起し出したので、

このあとどうする?

と聞いてみた。
本来、答えは一つしかないはずである。
ところが、そのコは、

あ。もうこんな時間だ。タクシーで帰るよ

と言って、コートを羽織り出した。

なんで帰るねん!

と突っ込むと、

だって、ピーちゃんが待ってるんだもん

などと言い出した。ピーちゃんは、彼女の飼っている文鳥である。

ピーちゃんだぁ??
夜中の2時に男の家に上がり込んでおいて、帰る理由がピーちゃんだとぉ!!

さすがの俺も、額の皺袋の緒が切れて叫んだ。

そんなもん、俺が喰ったる!!

しかし、そんな俺のヴェスヴィオ火山ばりの怒りの声も彼女には冗談としか聞こえなかったらしく、「あはは。またねー」と笑いながら帰っていった。
大体、ホントにいまどき文鳥なんて飼ってるのか?
どうも普段の俺が温厚過ぎるのが、毎度毎度仇になっている気がする。

しかし、そんなことを考えるより限界に眠くなってきたので、引き止めもせずにそのままベットに転がり込んだ。
目をつぶる前に、ふと時計を見遣ると、その針はすでに朝の5時を差していた。

8時に成田だと、何時に家を出ればいいんだろう?

泥酔いと疲労の頭に、この問いの答えは酷だった。。


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