男と女のいる鋪道08−期待外れ−

 


とある都内のキャバクラに独りの男が来ていた。男がこの店に通い出してから、もう半年になる。男は、生活に余裕がある身分でもなかったが、細々とでも金を作ってこの店に通っているのは、もちろんお目当ての女がいるからだった。男は度々、その女に自分の想いを伝えてきた。しかし、その返事はいつもはぐらかされている。ただ、その態度が完全に断るわけでもなく、どこか希望が持てるものだったので、男は定期的に同伴を繰り返し、店に顔を出していた。この日も男は女に自分をアピールしていたわけだが、ある時間、女がトイレに立つと、店内の音楽が切れ目だったらしく、隣の客とキャストの会話が丸聞こえになった。男はその会話に耳を傾けた。軽薄な客の店外への誘いと、それに返事をする女のポイント稼ぎを得たような応対とお願い。傍から聞いていると、それは出来の悪い演技が見え見えだった。男は、気分が悪くなった。そのとき丁度、女が戻ってきて男の不機嫌な様子に気がついた。理由を聞かれた男は、素直に答えた。
「いや、隣で口説いている会話が聞こえてね。キミも俺を都合の良いポイント稼ぎとしか思ってないのかと考えてね」
すると、女は、
「そんなことない。あなたは違うよ」
と、声を大きくして答えた。
男は、思わずその女の言葉に心に打たれた。
女は、続けた。
「だって、あなたは稼がしてくれるほどのお金もないでしょ。私は、あなたから何も期待なんかしてません」

 

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