男と女のいる鋪道06−夢−
会社員のTには、行きつけの呑み屋があった。もちろん、お目当てのキャストがいる店だ。そのキャストはMという、とても美人で魅惑的な女だった。TはMのために一財産失うほどに何度も店に通い続けながら、奥手である性格が災いして、個人的には少しの進歩もないまま今に至っている。ただ、いつか真剣に口説こう、と考えてタイミングを待っていた。ところが、ある晩、Mから届いたメールによって、Tの決意が固まる。そこには、こんなことが書いてあった。
「昨日は、Tさんの夢を見ました。お時間があれば、また逢いたいな」
客観的に見れば、ただの営業に見えるメールにも、このときのTには、まさに好機と映り、仕事もほっぽり出してお店に向かった。そして、お店で逢ったMは普段よりも美しく、Tに対して一段と優しく接してくれているように思えた。そこで、Tはとうとう思い続けたことを口にして伝えることした。口説き文句はこうだ。
「今度は、一緒に夢を見よう」
Tにとっては、先ほどのメールを掛けた名文句のつもりだった。
しかしながら、Tの言葉を聞いたMは喜ぶどころか、ため息を吐いた。Tは、拍子抜けしてMに聞いた。
「なんだよ。君にとって、俺は夢に出るほど親密なんだろ」
それを聞いたMは面倒臭そうに答えた。
「ゴメンなさい。確かに貴方は私の夢に登場したけど、夢の中のあなたには、現実と同じように何の魅力も感じなかったの」
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