男と女のいる鋪道05−女の相場−
男が、ある店で本気になったキャストの名前はYと言った。二人の出会いは、Yが夜の仕事にデビューしたての頃である。まだイロハも知らなかったYに対して、男はとても紳士的に接した。そして、何度かのお店での出会いの後、男の優しさにYも心を許し、ある時期から二人は付き合い出すことになった。ところが、Yは水商売で身に付いた贅沢癖から抜け出せず、次第に男の収入では追いつけないほどの生活を要求してきた。男は、Yに対する気持ちは変わらなかったが、さすがに無理な要求には答えることが出来ず、こう聞いた。「君と一緒になるためには俺は幾ら必要なんだい?」
すると、Yは答えた。「残念だけど、今の貴方の収入が倍にならないと無理ね」
二人は、その言葉を境に別れることになった。
しかし、一本気な男はそれでもYを諦められず、死にものぐるいで商売に努力した。Yのほうはと言うと、再び夜の仕事に戻り、休みなく働くほど夜の商売に程染まっていった。
やがて1年の後に、男は商売に成功し、約束通り倍の収入を稼ぐようになった。
そこで、男は、改めてYに求婚した。
ところが、そんな男を見て、Yは哀れむようにこう口にした。
「ごめんなさい。この1年で私の相場は上がったの。今の貴方なら、さらに倍の収入がないと無理だわ」
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