男と女のいる鋪道04−接待の極意−

 


ヘルパーの資格を目指して勉強をしているMのもとに、高校の友人Yから誘いがあった。Yは現在、赤坂にある高級クラブでホステスをしている。同じお店にホステスとして入店しないか、という誘いだった。Mはその唐突の誘いに、「経験もなく男性の扱いなど出来るわけもない」と首を横に振ったが、Yは、「大丈夫よ。キャバクラじゃないのよ。ウチは高級クラブだから、あなたなら絶対出来るって」と自信ありげに勧めた。Mはいまいちその言ってる意味が分からなかったが、お金に困っていたせいもあり、Yの勧めるままに入店した。その店は、座って3万、ボトルを入れれば軽く10万を超えるという高級店だけあって、出入りする客に若者はいない。ほとんどは中年以降。「会長」と呼ばれる人たちのなかには、すっかり耳が遠くなってしまった老人や杖を片手に足がおぼつかない者もいる。間違いなく、自分の祖父よりも年齢が上である。Mは、話しながら初めての経験であるはずの接待にどこか『ありふれた感覚』があるのを感じた。そのとき、隣に座っていた「会長」がYに向かってしがれた声で、「Mちゃん、わし、トイレに行きたいんだけどのぉ」と言った。Mは「はい、おじいちゃん」と口にしそうになった言葉を飲み込み、「会長」の腕を取ってトイレに連れて行きながら、友人Yが自分に向かってこのお店を勧めた理由を理解した。
『「老人の接待」と「介護」は似たようなものだ』。

 

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