世界にひとつだけの華・バンコク編
続いて、オフ会が始まること2時間。遅れてやってきたのは、タイはバンコク在住の求道者氏(29歳)である。
道を求める者と書いて求道者と書く。その名前の由来から、俺は「ビルマの竪琴」ばりにタイで僧侶として修行している精悍な男の顔を思い浮かべていた。もしも実際にそれらしき人物だったら、逢うなり「水島〜!!帰って来たなー!!」と叫ぶ準備すらしていた。
ところが成田から直行で我々の目の前に現れた男は、予想と違ってうつろな視線と特異な頭髪をしていた。
思わず俺はこう呟いた。
ジャイアント落合さん、生きてたんですね。
と。
彼の頭髪がどのようなものだったかはご想像におまかせするとして、一体、彼が求めているものは何なのか。いや、今回の出会いはそういった彼自身に関するあらゆる疑問すらも横に置いておくほどインパクトの強いものだった。
ただ、俺は人間の根幹を司るあることについて、考えさせられた。
それは、
人間の本能とは何か。
理性(意識)はなぜ必要なのか。
ということである。
最先端の脳医学の世界などで研究テーマとなっている問題に、「意識の存在の必然性」ということがある。「意識とは何か?」ではなく、「なぜ、人間は意識を持つようになったのか?」ということだ。
今の科学のアプローチだと、なぜ人間は、ゾンビのように本能のままに生きる存在にはならず、主観的な体験を持ち、例えば、社会を造り、宗教をつくり、恋をして相手の気持ちを思いやり、翻って憎しみ合うようになったのかが分からない。
ところが、俺は、その解答の糸口を求道者氏を見て唐突に閃いたのだ。
待ち合わせ現場で出会ったときには、すでに彼は酔っ払っていたので、シラフの彼がどのような人格を持っているのかは定かではないのだが、彼の行動が、理性というものを取っ払った人間本来の本能というものをまざまざと見せつけてくれたのだ。
女性(メス)がいれば、際限ギリギリまで側による。そして、肩に手を回して触れる、息を吹きかける。びびる女の子の心境はお構いなし。しかも相手を全く選ばないところがまた本能たる所以である。強姦にいたらなかったのは、たぶん電気ショックかなにかを与えられたかして、パブロフの犬的に条件反射で思いとどまっているに過ぎない。
大体、これまでの経過から、俺の前で醜態を晒した男たちがコラムでどのような描かれ方をして、世界中に晒し者になるかは、分かっているはずである。しかし、そんなことは酔って本能をスパークさせている求道者氏には意に返す問題ではない。
出された食べ物は、即座に胃袋に入れる。ゲットした名刺の裏側に書かれたアドレスは、その場で自分の電話に入力。でも、気にいらない相手には「ばか」とののしる。ついでに財布に入った大量の万札は、あるだけ使ってしまう。朝方近くまで残ったメンバー7人に、一介のサラリーマンが1セット16000円(!)もする自分の行きつけのお店をテンションにまかせて全額奢ってしまうのだ。総額約12万円である。将来のためとか明日の我が身とかは全く考えた様子はない。一時の快楽のためだけに、これだけ非経済的な行動に流されるその姿は、ある意味、神がかりでもあった。
人間がなぜ、理性を持つようになったのか。
仮に、世界中の人々が彼のような本能にまかせた行動を取り出したら、どうだろうか。
3日で世界が滅びてしまうことは確実である。
理性を持った己に感謝しつつ、筆を置く。
P.S. 求道者様、勝手な意見失礼いたしました。
先日のことは、覚えていらっしゃらないと仰ってましたが、こちらとしては、どうでもいいくらいに楽しかったです。大変御馳走になりました。これからもよろしくお願いいたします。