12人の優しい日本人(後編)
人類の夢の一つに「永久機関」というものがある。
「永久機関」とは、簡単に言うと「外部から燃料やエネルギーを与えなくても永久に仕事をする」機械のことである。
最初の動作を加えるだけで,あとはなんの燃料も与えず,なんの力を加えることもなく,永久に動作し,エネルギーを作り続けるというもの。太陽電池などで動くものは含まれない。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチや幾多の発明家が、この機械の完成を夢見たとされているが、現代物理学では、熱力学第1法則(エネルギー保存の法則)と第2法則の物理法則により絶対に不可能とされている。
万が一、永久機関ができたら、ノーベル物理学賞どころか人類の生活を一変させることができると言っても過言ではない。
ところが物理学者でもない俺が、この機械を作るヒントを、「キャバクラ独眼鉄オフ会」で発見したので聞いてもらいたい。
そのヒントとは、錦三ナイツ氏その人である。
俺は世界中の物理学者に、提案したい。
永久機関のために、錦三ナイツ氏の遺伝子を埋め込んでみたらどうか。
と。
錦三ナイツ。
「歩く前立腺」
「毛穴まで挿入する男」
「西日本のリトルボーイ(広島型原爆)」
「全身海綿体」
など数々の異名を持つ彼(半分はうにお氏が、半分は俺が今考えた)を12月2日19時30分。我々は某駅にて、いよいよ出迎えて、居酒屋で呑むことにした。
名古屋から遥々東京まで来た錦三ナイツ氏に今晩の宿などない。当然これから朝までの長丁場であることは確実だ。
しかし、奴は呑む。
後のことなど考えてないかのごとく、10分置きにジョッキを掲げて、
ゴム無し(ナマのことらしい)、追加だ!
と場が静まり返るのもお構い無しに、お代りを要求する。
居酒屋では、俺か次元氏が会話をリードするという展開で終始したが、2軒目のキャバクラになると彼の独壇場だった。(なお、キャバクラには女性二人も参加)
「お前、いつの間に肩を暖めていたんだ」と思うくらい初回から全力投球。
始発が動くまでは、9イニングをフルに投げなければいけないというのに、まわりが唸るほどの160キロのストレートを投げ続けた。まさにフルスロット。
座って5分で、オロオロさんが、
「彼は、もう佳境ですか」
と呟いたのが、彼の飲み口説きっぷりを表わすに相応しい言葉である。
1軒目の店を出ると、彼は夜空に響き渡る声で、
東京は簡単やなあー!!
と叫んだ。
何が簡単なのですか。
と聞くと、
さっき、チュ−してもうた。
と、のたまう。
うかつにも次元氏としずの取り合いをしていて、注視すべきはずの彼の行動を見損なってしまっていた。まさか、いきなり普通のキャバでそんなことをしていたとは。
次の店でも、彼は同じテンションで話し続けた。佳境は終わらないらしい。
そして、相手を選ばないところに彼の流儀があった。
俺は女は選ばねえ。惚れたりはしねえからな。ヤるだけだ。
堂々と彼はそう公言した。
しかし、格闘家なら相手を選ばないで戦う男は理想であるが、キャバクラーとして理想なのかは正直判断が難しいところである。
3軒目の店は例によって皆で楽しめるセクキャバ。
ここでは、しずが女でありながら堂々と同行して楽しそうに乳を揉んでいたり、サスペンダー氏が初対面のメンバーに囲まれながら唯一全裸で縮んだ股間を晒していたりと事件は多くあったが、やはり錦三ナイツである。揉みっぷりも真剣であった。
4軒目。最初に入った店に出戻った。
その後、メンバーも半分に減ったものの3人のキャバ嬢を捕まえて意味不明のメンバーでアフターへ。
俺を含めた他のメンバーがかなりペースダウンしている中、ほとんど唯一錦三ナイツ氏は、変わらないペースで呑み続け、「ヤらせろや!」を連呼している。
このあたりから、言葉の魔術師と呼ばれた俺が完全に防戦一方である。
手強い。手強すぎる。
5時過ぎて、もはや訳も分からないテンションでなぜか、キャバ嬢数人としずを従えて我が家(独眼鉄邸)に流れ込んでからも、彼はコンビニで片手じゃ持ちきれないほどのビールを買い込み、呑み続けた。
女の子との会話も、ひたすら下(シモ)へと向うあたり、はっきり言ってその場を圧倒。ペースダウンというものを知らないとしか言い様がない。
さらに、彼は衝撃的な発言をした。
名古屋に帰ったら、そのまま同伴デートだ。
×××
すごい。。ある意味、人間じゃない。。
永久機関。
人類が夢見る機械に、錦三ナイツ氏の遺伝子を埋め込んだらどうか。
ただし、
万が一完成したとしても、永遠に酒を呑み、女を口説き続ける機械なら欲しくもないが。。
...と、色々書いたが、一つだけ彼をまともに褒めておきたいことがある。
それは、彼の強姦まがいの言葉の過激さとは裏腹に、セクハラ(触る意のセクハラ)の類いをする様子は一切見せなかったことだ。脳みそまで海綿体で出来ているような男だったが、相手を同意させるまでは指一本触れない姿勢は彼の美学として男を感じた次第である。
P.S. 錦三ナイツさん。わざわざ名古屋から来京していただいた挙げ句、御馳走になって、申し訳ありませんでした。でも、また御馳走して下さい。よろしくお願いします。