カリオストロの死亡遊戯


1999年7の月
空から恐怖の大王が降ってくるだろう
アンゴルモアの大王を復活させるために
その前後の期間、火星は幸福の名のもとに支配するだろう

(ノストラダムス「諸世紀」より)


とうとうこの日がやってきた。
松戸で開かれたオフ会で一度顔を合わせたルパン氏と、サシで飲むお誘いがあったのだ。
ルパン氏というと、このサイトの極秘キャラとなっている。つーか、俺が極秘にした。
そうしたには、幾つかの理由があった。
その有り余る存在感の大きさに、俺に彼の魅力(悪口)を書き切れる自信がなかったのと(怖かったから)、そのハンドルネームと実物のあまりの相違に読者が混乱するのではないかという配慮からである。
「名は体をあらわす」という言葉がある。
田中正造が足尾鉱毒事件を訴えるために天皇に直訴したかのごとく言わせてもらうと、彼の場合ルパンというより、ラオウとかカイオウとか少なくとも語尾に「オウ」というフレーズを付けるのが妥当なのではないか。
腹を掻っ捌く気でそう進言させてもらいつつ、以下当日のレポートである。

連休最終日の夜も10時。
ルパン氏の知り合いの店があるという東京東部のSという駅で待ち合わせをした。
俺はもちろん電車でその駅に向ったが、彼は車で来ると言う。
酒飲むのに車で来るというのもいきなり強気だが、俺は待ち合わせ時間が過ぎ、お互い駅周辺の間近にいるのを確認しながらも、ルパン氏の車をなかなか見つけられなかった。それもそのはず、失礼な先入観だが、俺は彼が3000cc以上の大型車、下手したら10トントラックかタンクローリーで来るもんだとばかり思っていたのが、普通のワゴン車(未改造)に乗っていたのだ。分かるはずがない。

「お久しぶりです」という挨拶の後、ルパン氏の知り合いの店を目指すが、なぜか道に迷ってしまう。「常連じゃないんですか」と聞くと「まだ行ったことがない店だ」と言う。しかも、ルパン氏が言う知り合いとはオキニ嬢ではなく、店のスタッフだと言うのだ。我々素人が外から攻撃を仕掛けて討ち死にしているのと違う。内部に触手を伸ばしているあたりやはりタダ者ではない。言うなれば、我々は南斗108派の一欠けら、彼は北斗神拳の使い手だとも言える。結局、最初に目指した店ではなく、その系列店を教えてもらい、そこに向かった。
ショークラブというその店にも入り口に何人かのボーイが立っていた。ボーイの一人がルパン氏の姿を見るなり「お久しぶりでございます」などと深々と頭を下げて来た。
頼もしいとは、まさにこのことである。

入店すると、いきなりフルーツ盛り合わせが出てきた。もちろん注文もしていない品である。オフ会でもこのような光景が見られた気がするが、ルパン氏が行くところ毎回のようだ。しかし、誤解のないように言っておくと、(当たり前だが)決して彼が怖がられてるから出て来る、というわけではない。完全に店側の好意なのだ。それにはもちろん理由がある。普通の客はアフターといえば嬢とするものだが、彼はボーイを飲みに連れて行ったりして面倒を見ていたらしいのだ。それも損得勘定をするような男でもない。生来の親分肌というわけだろう。

嬢が付くと、我々は口説くわけでもなく、しゃべりまくるわけでもなく、のんびりとした時間を過ごしたわけだが、一人の嬢がルパン氏の隆々とした腕を見て、「すごーい!なんかやってたんですかぁ?!」とその腕を撫で回した。ルパン氏は、「喧嘩だけだよ」と謙遜してるんだか脅かしてるんだか分からないことを述べた。
聞くと、彼はヤクザとすらもバッチを外せばタイマンを張る、という
そこで、俺は前田慶次にまつわる話し(というより隆慶一郎か原哲夫が書いただけだろうが)をそのコにしてやった。

虎が日々強くなるために鍛えたりするかい?虎は生まれ持って強いから虎なんだよ。彼の強さに理由はないんだ。

そのコは、妙に納得したような顔をした。

時間が来て、その店を1セットで出ると、隣駅にある別の店に行くことになった。
夜の街としては無名のIという町に、1階から6階まですべてキャバクラというビルがあった。実際、その町にはそこしかキャバクラがないと言っても差し支えないところだ。
ビルの前で立ち止まると、それぞれの階の客引きが群がって来た。そこで交渉して一番安くて高サービスの提供を約束した6階のキャバクラに入った。
この店は、1セット4000円で女の子はなぜか水着という店だった。おねだりもなかったし、そこそこ可愛いコもいたので悪くない店だった。
しかし、ここも1セットで出た。そして、続いて5階のキャバクラに向った。
ここでも、我々はルパン氏の顔で食事が出て来るなど、悪くない待遇を受けた。
時間が来ると、同じく1セットで出て、さらに4階のキャバクラに向った。

6階、5階、4階。。
登るか降りるかの差はあるが、まるで、「死亡遊戯」である。ブルース・リーは、悪の一味を倒すために、レッド・ペッパー・タワーに登っていったわけだが、果たして我々は何の目的でこの風俗ビルを一つずつ降りてるのだろうか。
しかし、その答えは見付かるわけもなく、翌日は平日だというのに時間は夜の3時を過ぎ、我々は退散することとなった。惜しくも、このビルを完全制破することは叶わなかったわけだが、叶ったところで財布からお札が無くなる以外に何があるわけでもなかったろう。 (しかもルパン氏の)

キャバクラとは一体何なのだろうか?

今さらながら、そんなことが頭をよぎった夜でもある。

P.S. ルパンさん、大変御馳走様になりました。
途中からは、俺のほうがテンションが上がってしまって、むしろ付き合わせてしまったかもしれません。
失礼しました&ありがとうございました。

 

 

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